「好みのタイプ? フクロウみたいな子かなぁ?」
収録中、彼がそう言った瞬間、スタジオがどっと沸いた。
共演者が「どないなタイプやねん!」とツッコミ、彼はお得意の照れ笑いで頭をかく。
その笑顔を、私はテレビの向こうで見ていた。
あのヒョウ柄のシャツも、きっと今日も自分で選んだんだろう。
派手なのに、なぜか似合う。
あの人は、まるでステージ用の光をまとって生きている。
誰も知らないけど、私は彼の“フクロウ”だ。
夜行性で、静かで、見守るのが得意。
人前では決して寄り添えないけれど、暗い部屋でLINEの既読がつくたびに、胸の奥があたたかくなる。
「おれさ、あんたの前やと全然オチつけられへんねん」
彼が言った夜があった。
「笑いの人やのに?」と私がからかうと、彼は少し黙って、「……笑われへん場所が、ひとつぐらいあってもええやろ」と呟いた。
テレビでは明るく騒ぐ彼も、実際は几帳面で繊細だ。
ネタ帳の文字はびっしり整っていて、ペン跡に迷いがない。
その几帳面さが、私にはいとおしい。
先週、彼の事務所から「熱愛報道注意」の通達が出た。
「見られたら、終わりやな」と冗談めかして言う彼に、私は小さく笑って答えた。
「終わりやなくて、始まりやったりして」
沈黙のあと、彼がふっと笑った。
「ほな、その時は、堂々とフクロウ連れて出たるわ」
彼の声には、舞台の照明みたいな明るさがあった。
少しのスパイスと、ちょっとの嘘と、たっぷりの愛情。
それが、私の“ヒョウ柄の人”との恋。

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