黄─中央金車輪

運動会の日は、朝から空がやけに青かった。
子どもたちの歓声と、笛の音と、焼きそばの匂いがまざって、なんだか胸の奥がくすぐったくなる。

父親リレーの順番が回ってきたとき、息子の声がスタンドから響いた。
「パパ、がんばってー!」
その声だけで、なんだかもう優勝したような気分だった。

バトンを受け取った瞬間、足が思うように動かなかった。若いつもりでも、体は正直だ。
ゴールテープを切ったとき、僕は三番目だった。
笑って手を振ったけれど、スタンドの息子は泣きそうな顔で下を向いていた。

「ごめんな、1位になれなくて」
そう言うと、息子は唇を噛んで、くるりと背を向けた。
その小さな背中が遠ざかるのを見ながら、胸の中に小さな穴が空いたような気がした。

しばらくして、彼は戻ってきた。手の中にくしゃくしゃの折り紙を握っている。
「これ、あげる」
差し出されたのは、涙で少し波打った黄色い折り紙のメダルだった。真ん中には下手くそな丸が描かれ、そこに「1」と書かれている。

「パパがいちばん頑張ってたもん。だからこれ、パパの金メダル」

僕は何も言えなかった。
ただ、折り紙のメダルを首にかけて、彼の頭をなでた。
その瞬間、風が吹いて、空の青が一層濃く見えた。

あのときの折り紙は、今も机の引き出しにしまってある。
色は少し褪せたけど、あの小さな手の温もりだけは、今も変わらず残っている。

コメント